つばさだより 2023.01.03

【2023.1月号】つばさだより No.338

ポリファーマシーとは?

 ポリファーマシーとは「Poly(多くの)」+「Pharmacy(調剤)」の造語ですが、単に薬の種類が多いことではなく、必要以上の薬の使用や漫然と薬が投与されることによって有害事象を起こしたり、きちんと薬を飲めなくなったりするなどの問題に繋がる状態を指します。

 

ポリファーマシーの定義

 ポリファーマシーの状態は、患者さんの病態や生活、環境によっても変化するため、何種類以上をポリファーマシーとするという厳密な定義はありませんが、日本老年医学会によると高齢者では処方される薬が6種類を超えると有害事象の発生頻度が大きく増加するというデータもあります。ただし、治療に適正な薬の数が6種類を超えることもあるため、ただ単に薬の種類を減らせば良いという話ではありません。

薬が増えてしまう原因

 ポリファーマシーが発生してしまう背景として、急速に進む日本の高齢化があげられます。高齢者はさまざまな疾患を抱えていることが多く、複数の医療機関にかかっていることは珍しくありません。1つの医療機関で処方されている薬は2~3種類だとしても、受診先が増えるごとに薬も足されていくため、結果的にポリファーマシーが発生しやすい環境となります。厚生労働省の調査によると、特に75歳以上の患者さんでは、約4人に1人が7種類以上の薬を処方されているという報告もあります。

ポリファーマシーの問題点

① 薬物有害事象の発生
有害事象とは、薬との因果関係がはっきりしないものを含めた、あらゆる症状・兆候・疾病のことです。ふらつきや転倒が骨折の原因となり、QOL(生活の質)を大きく低下させることもありえます。


② 国民医療費の高騰
複数の薬が処方されることは、国民医療費の高騰にも繋がります。2018年度に医療機関に支払われた概算医療費は、前年度より3000億円増えて42兆6000億円となりました。


③ 飲み忘れ、飲み間違いの増加
多くの薬が処方されると用量や用法が複雑になり、特に高齢者には「飲み忘れ」や「飲み残し」が起こりやすくなります。その結果「使わなかった薬(残薬)」がたまるだけでなく、正しく服用できなかったことで症状が悪化し、さらに薬が増えるといった悪循環に陥ってしまう場合があります。

 

ポリファーマシーに対してできること

① かかりつけ薬剤師を決める

 かかりつけ薬剤師を決めて受診先の医療機関と服薬情報をまとめて管理してもらうことでポリファーマシーの発見に繋がります。


② 病院と薬局でおくすり手帳を見せる

 複数の病院、薬局を利用している場合はおくすり手帳を活用することで薬の飲み合わせや薬の重複を防止することが出来ます。また、おくすり手帳は病院や薬局ごとに分けず、1冊にまとめておきましょう。

 

ポリファーマシーが気になったら

 ここまで薬を多く飲むことの問題について触れてきましたが、薬が多いからといって必ず減らすべきということではありません。薬によっては、急にやめると病状が悪化 したり、思わぬ有害事象が出ることもあるため自己判断での中止は絶対にせずに、必ず主治医もしくは薬剤師に減らすことができる薬はないか相談してください。

 

【参考文献】
 高齢者の医薬品適正使用の指針(厚生労働省)
 あなたのくすり いくつ飲んでいますか?(くすりの適正使用協議会)
 ポリファーマシーとはなんでしょうか (日医工株式会社 )
 一般向けパンフレット「多すぎる薬と副作用」 (一般社団法人 日本老年医学会)


 どちらの病院の処方箋でも受け付けています(在庫がない場合、準備にお時間を頂くことがあります)。
 薬の情報をまとめて管理することで、より確実な飲み合わせのチェックができます。


 現在、つばさ薬局ではセントラルキッチン栄養士による栄養相談をコロナ感染拡大防止の関係で休止しておりますが、
 個別に栄養士の相談を受けることができます。ご希望の方はご遠慮なく職員にお申し出ください。