つばさだより 2022.12.26

【2022.12月号】つばさだより No.337

 今月は喘息(ぜんそく)についてのお話です。喘息とは、一般的に気管支喘息のことを言います。気道(空気の通り道)が、慢性的な炎症が原因で過敏になり、発作的に気道が狭くなることを繰り返す疾患です。日本の喘息患者数は1000万人ともいわれています。病型分類のひとつとして、原因アレルゲンが明確なアトピー型(アレルギー型)喘息と、明確でない非アトピー型喘息があり、アトピー型は小児喘息の大多数、成人でも過半数を占めています。

【症状】

 咳、呼吸困難、痰、喘鳴(ぜんめい。ゼーゼー、ヒューヒューと鳴ること)、胸苦しさ、胸痛などが起きます。夜間から明け方に症状が起きやすいことが特徴で、感冒や運動、天候の変化、冷気、強いにおい、アレルゲン曝露などにより誘発されることがあります。

 咳喘息は呼吸困難を伴わない慢性的な咳が唯一の症状で、治療方針は典型的な喘息と基本的に同じです。咳喘息の約3割が典型的な喘息に移行するとされていますが、早期診断と治療の継続により移行率が下げられるとの研究報告があります。

 

【治療の目標】

・気道炎症を制御し、正常な呼吸機能を保つ (喘息治療でとても重要)
・喘息死や急性増悪の予防、呼吸機能の経年低下を抑える、健康寿命と生命予後を良好に保つなど、将来のリスクを回避する。

 

【喘息発症の原因】

 複数の個体因子と環境因子が複雑に相互に作用して発症します。下の表が各因子の例です。環境因子は、症状の増悪につながる原因でもあり、これらを除去(対処)することで増悪を防ぐことにつながります。

【喘息患者さんの気道で起きていること】

 気道の慢性炎症は、2型免疫反応などが関与しており、アレルギー性炎症とも呼ばれます。

気道平滑筋の収縮:アレルゲン曝露により、ロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、気道平滑筋が収縮します。ロイコトリエンは炎症を悪化させる作用もあります。
気道粘液の分泌亢進:粘液の主成分であるムチンは、気道表面の水分を吸収して膨張し、末梢気道で粘液栓(粘り気が強い痰)を形成し易くなります。
気道リモデリング:気道炎症が慢性的に続くことで気道壁が厚くなり、気道構造が変化した状態です。気道が狭くなり、空気の流れが元に戻りにくくなり、気道過敏性も進みます。重症度が高く治療が難しくなる場合が多いです。

【検査】

アレルギー検査:喘息の診断や、治療法について判断する際に有用。
スパイロメトリー:呼吸機能(気流閉塞)を評価する。
ピークフロー(PEF)値:気道閉塞の程度を示します。PEFメーターを用いて自宅で経時的に測定することで、自己管理に有用です。
ほかに、好酸球数など炎症の状態を調べる検査などがあります。

 

【治療】

 吸入ステロイド薬が喘息治療の基本となり、状態によって薬剤の選択や追加を行います。主な治療薬をご紹介します。

〈長期管理薬(コントローラー)〉

 症状がない時でも毎日続ける薬です。自己判断で中断したりすると重症化につながる場合があるため、継続して使用しましょう。

① 吸入ステロイド薬(オルベスコ、フルタイド、パルミコートなど):直接気道に作用し、慢性的な炎症を抑え、気道過敏性を抑えます。

② 長時間作用型β2刺激薬(セレベント、ツロブテロールなど):交感神経の働きを亢進して気道を広げ、呼吸を楽にします。
③ 長時間作用型抗コリン薬:副交感神経の働きを抑えて気道を広げ、呼吸を楽にします。(緑内障や前立腺肥大症がある場合は医師へ要相談)吸入薬は、①~③の成分を組み合わせて、ひとつの吸入薬にまとめた「配合剤」もあります。(レルベア、テリルジー、アドエア、フルティフォームなど)
④ ロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト、モンテルカスト):気道の慢性的な炎症を抑えたり、気道を広げる作用もあり、アレルギー性鼻炎の合併例にも有用です。
⑤ テオフィリン徐放製剤:気道を広げる。喫煙やカフェインと相互作用があり、コーヒーや栄養ドリンクなどは摂り過ぎに注意しましょう。
⑥ 生物学的製剤、経口ステロイド、手術:①~⑤でコントロールが困難な場合に検討されます。


〈増悪(発作)治療薬(リリーバー)〉

・短時間作用型β2刺激薬(サルタノール、メプチンなど):短時間で気道を広げ、呼吸を楽にします。抗炎症作用はありません。使い過ぎによる不整脈に注意が必要です。
・全身性ステロイド薬(プレドニゾロンなど):飲み薬や点滴で投与します。

 

【吸入薬について】

注意点:吸入ステロイドの副作用に、声のかすれや口腔カンジダがあります。副作用予防に、吸入後はブクブク・ガラガラうがいを各3回は行ないましょう(うがいが難しい場合は水を飲むでも可)。食直前や歯磨き前の使用、吸入前後に水を飲むことも副作用予防につながります。
効果的な吸入方法「ホー吸入」:吸入薬は、薬の通り道にある舌への付着が多いと、気道まで到達する量が減ってしまいます。吸入前の息吐きのときに「フー」ではなく「ホー」と吐き、「ホー」の口・舌の形で吸入すると、舌が押し下がり、薬の通り道が広く保たれます。詳しい方法は薬剤師へご質問ください。

 

【アスピリン喘息について】

 喘息患者さんの約5~10%で、解熱鎮痛薬により、喘息発作が起こる場合があります。喘息と診断された方は、解熱鎮痛薬は医師へ相談してから使用しましょう。

〈参考文献・図引用〉各ガイドライン(喘息予防・管理2021、喘息診療実践2022、小児気管支喘息治療・管理2020)、日本アレルギー学会HP、環境再生保全機構HP、ぜん息外来.jp)


 どちらの病院の処方箋でも受け付けています(在庫がない場合、準備にお時間を頂くことがあります)。
 薬の情報をまとめて管理することで、より確実な飲み合わせのチェックができます。


 現在、つばさ薬局ではセントラルキッチン栄養士による栄養相談をコロナ感染拡大防止の関係で休止しておりますが、
 個別に栄養士の相談を受けることができます。ご希望の方はご遠慮なく職員にお申し出ください。