つばさだより 2022.05.09

【2022.5月号】つばさだより No.330

COPD:chronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患)とは、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。たばこの煙などの有害物質が原因で肺が炎症を起こし、呼吸がしにくくなる病気です。喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。

【原因】

 有害物質の吸入や大気汚染によって起こります。中でも原因のトップにあげられるのはたばこの煙です。日本ではCOPDの原因の90%以上が喫煙によるものといわれています。有害な物質が長期にわたって肺を刺激すると、細い気管支に炎症を起こし(細気管支炎)、咳や痰が多くなります。その結果、気管支の内側が狭くなり、空気の流れが悪くなります。

 有害物質は肺胞にまで及んで炎症を起こすと、肺胞の壁が破壊され、古くなったゴム風船のように弾力がなくなり(肺気腫)、空気をうまく吐き出せなくなります。このように、COPDは細気管支炎や肺気腫により、肺の空気がうまく吐き出せなくなり、その結果酸素不足を起こし、息切れを起こす病気です。


<呼吸の仕組み>

 肺は空気中から体内に酸素を取り込み、体内でつくられた二酸化炭素を空気中へ排泄(ガス交換)する臓器です。吸気によって取り入れた酸素は肺胞から血液を通じて全身の細胞へ送り込まれます。そして、栄養素が燃焼してエネルギーに変わるときに発生した二酸化炭素を血液から受け取り、呼気として体外へ排泄しています。

 

【症状】

 歩行時や階段昇降など、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や慢性の咳や痰が特徴的な症状です。

 一部の患者では、喘鳴や発作性呼吸困難などぜんそくの様な症状を合併する場合もあります。

 

【診断】

 長期の喫煙歴があり慢性に咳、痰、労作時呼吸困難があればCOPDが疑われます。確定診断にはスパイログラムという肺活量などを測定する検査です。胸いっぱい吸い込んだ空気をどれくらい素早く吐き出せるかを測定します。検査装置があれば直ちに結果を判定することができます。また、COPDは全身の炎症、骨格筋の機能障害、栄養障害、骨粗鬆症などの併存症をともなう全身性の疾患です。これらの肺以外の症状が重症度にも影響を及ぼすことから、併存症も含めた病状の評価や治療が必要になります。

 

【治療】

 COPDに対する管理の目標は、(1)症状および生活の質の改善(2)運動能と身体活動性の向上および維持(3)増悪の予防(4)疾患の進行抑制(5)全身併存症および肺合併症の予防と治療(6)生命予後の改善にあります。気流閉塞の重症度だけでなく、症状の程度や増悪の頻度を加味した重症度を総合的に判断したうえで治療法を段階的に増強していきます。

禁煙:喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまいますので、禁煙が治療の基本となります。


薬物療法

 いずれも気管支を広げ呼吸をしやすくする作用によって症状を軽減します。最近は効果に優れた吸入薬が開発されていますが、残念ながら破壊された肺を完全にもとの健康な肺に戻す作用はありません。したがって症状を完全に取り去ることはできませんし、薬を中止した場合、症状はもとに戻ってしまいますので、主治医の指示に従って治療を続ける必要があります。

 薬物療法の中心は気管支拡張薬(抗コリン薬・β2刺激薬・テオフィリン薬)です。効果や副作用の面から吸入薬が推奨されており、主として長時間気管支を拡張する吸入抗コリン薬や吸入β2刺激薬が使用されています。気流閉塞が重症で増悪を繰り返す場合は、吸入ステロイド薬を使用します。長時間作用性β2刺激薬と吸入用ステロイドの配合薬も有用です。

 一部の緑内障の治療を受けている方、前立腺肥大症で治療を受けている方は使用できない薬があります。受診の際は必ず治療を受けていることを医師に伝えてください。また、テオフィリン薬は喫煙をしている方が禁煙をすることで薬の効き目が強く出ることがあります。禁煙補助剤の使用も含め、禁煙をする場合は医師にお伝えください。


各種ワクチン:憎悪を避けるためにインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種が一般に勧められます。


非薬物療法:呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練・運動療法・栄養療法など)が中心となります。

 

〈参考文献〉日本呼吸器学会ホームページ・環境再生保全機構ホームページ・独立行政法人国立病院機構近畿中央呼吸器センターホームページ


 どちらの病院の処方箋でも受け付けています(在庫がない場合、準備にお時間を頂くことがあります)。
 薬の情報をまとめて管理することで、より確実な飲み合わせのチェックができます。


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