コレステロールとは…?
ヒトの体に存在する油(脂質)の一つで、悪者と思われがちですが、私たちの体を作る重要な役割を果たしています。
コレステロールには、主としてLDLコレステロールとHDLコレステロールがあり、LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを血管を通じて体中の細胞に運ぶ働きをしています。血液中にLDLコレステロールが増えすぎると動脈硬化を進行させる要因となるため「悪玉」と呼ばれています。
一方のHDLコレステロールは、いろいろな臓器で使いきれずに余ったコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをしていて、動脈硬化を抑える方向に作用するため「善玉」と呼ばれています。
脂質異常症とは…?
悪玉のLDLコレステロールや血液中の中性脂肪(以下トリグリセライド)が必要以上に増えるか、または善玉のHDLコレステロールが減った状態のことです。
LDLコレステロールが高いと、血管の壁にコレステロールがたまりやすくなります。そうすると、血管にコレステロールがこぶのように盛り上がり、血液の流れが悪くなります。これが動脈硬化です。動脈硬化が進行し、血管が狭くなると、突然そのこぶが破れて出血し、血栓ができ血管が詰まる危険があります。特に危険なのは、心臓の冠状動脈で起こる心筋梗塞や狭心症、脳血管では脳梗塞でありいずれも生命にかかわるものです。
脂質異常症は、高血圧や糖尿病と比べてあまり知られていませんが、厚生労働省の調査によると、患者さんの総数は約220万人(2019患者調査)とされており、その数は年々増えています。その理由として食生活の欧米化、運動不足などが関係していると考えられています。
〈脂質異常症診断基準〉
LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | 40 mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド | 150 mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
Non- HDLコレステロール | 170 mg/dL以上 | 高non- HDLコレステロール血症 |
150~169 mg/dL | 境界域高non- HDLコレステロール血症 |
脂質異常症の原因と改善方法
① LDLコレステロール高値の原因 は、食事中の飽和脂肪酸のとりすぎがあげられます。飽和脂肪酸は、肉の脂身(赤身ではなく白い部分。バラ肉、ひき肉)・バターやチーズ、インスタント加工食品などに多く含まれます。LDLコレステロールが高い人で、飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む食品をよく食べる人は、その量を控え、不飽和脂肪酸を積極的に摂取することで、LDLコレステロールを下げる効果が期待できます。
② トリグリセライド高値 の原因は、エネルギー量のとりすぎ、特に甘いものや酒・油もの・糖質のとりすぎがあげられます。これらを改めて運動や減量を行うことが重要になってきます。
③ HDLコレステロール低値 はトリグリセライドの高値と連動することが多く、その要因は、肥満や喫煙・運動不足です。運動や減量・禁煙によりHDLコレステロールの上昇が見込まれます。また飲酒は、HDLコレステロールを高くする働きがありますが、高血圧や肝臓の働きを悪化させる危険性がありますので、過度な飲酒は控えましょう。
主な脂質異常症の治療薬
生活習慣の改善を行っても、コレステロール値が下がらない場合は、薬による治療が開始になります。
薬物治療の中心となる薬には以下のようなものがあります。
・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)
肝臓におけるコレステロール合成を抑え、主に血液中のLDLコレステロールを低下させ、動脈硬化などを予防します。
・フィブラート系薬剤
肝臓での中性脂肪の産生を抑え、胆汁へのコレステロール排泄を増加させるので、肝臓や血液中の中性脂肪やコレステロールが減少します。
・小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)
小腸細胞にあるタンパク質を介してコレステロールの吸収を抑え、肝臓や血液中のコレステロールが減少します。
薬物療法を始めたからといって、食事療法や運動療法を含む生活習慣の改善をやめずに、生活習慣の改善をきちんと続けることで、お薬の効果もより期待できるものとなるでしょう。
〈参考文献〉厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト、公益財団法人 日本心臓財団、
生活習慣病オンライン、一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
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