
口腔ケアに期待できる効果
お口の健康は、全身的な健康状態に密接に関連していることが報告されており、口腔ケアを行うことで様々な効果が期待できます。
•感染症予防
ウイルスの侵入を助けてしまうタンパク分解酵素を作る口腔内の細菌を減らします。それにより、細菌が気管から肺に侵入(誤嚥)しておこる誤嚥性肺炎のリスクも低下します。
•フレイル(心身機能の低下)予防
かみにくさ、食べこぼし、むせなど口まわりの “ささいな衰え” であるオーラルフレイルを予防でき、噛む機能を維持することで低栄養やフレイルのリスク低下につながります。
•認知症予防
歯がそろって(義歯でも可)よく噛めると脳の活動が活発となり認知症発症リスクを抑制できます。
•糖尿病、心疾患、脳血管疾患などの予防
いずれの疾患も歯周病との関連性が報告されています。糖尿病は、歯周病の改善が糖尿病の改善につながります。
•抗がん剤治療に伴う口腔トラブルの予防と軽減
抗がん剤治療中は、口の中にも様々な副作用が高頻度で現れるため、治療開始前からの口腔ケアが有効であると報告されています。
口腔ケアの種類
口腔ケアは、口の中の清潔を保つための「器質的口腔ケア」と、食べる・話すなどの機能を維持・向上させるための「機能的口腔ケア」の2種類に大別されます。
器質的口腔ケアの方法
●歯磨き(ブラッシング)
歯ブラシの毛先を歯面や、歯と歯茎の境目に当て、歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力で、小刻み(5~ 10㎜ぐらいの幅を目安)に動かし、1~2本ずつ磨きます。1ヶ所あたり20回程度が目安です。歯間部清掃にはデンタルフロスや歯間ブラシを活用していきましょう。
食後に少なくとも1日1回は丁寧に磨くことが大切です。特に、就寝中は唾液の分泌が減少して細菌が増殖しやすいため、就寝前の歯磨きでむし歯・歯周病リスクを抑制していきましょう。
また、自分に合った歯ブラシを選ぶには3つのポイントがあります。
1 使用する「目的」にあった歯ブラシ設計
商品の表示を目安にして「むし歯を予防したい」「歯を白くしたい」など、今自分が気になっていることや目的に合わせて選びましょう。
2 自分にあった「ヘッドの大きさ」
「歯並びが気になる」「隅々まで丁寧に磨きたい」という人は、小さ目のヘッドを選びましょう。また、ヘッドの横幅が狭いと歯と歯茎の境目が磨きやすく、広いと歯面に対して安定しやすいといった特徴があります。
3 歯茎の状態にあわせた「毛のかたさ」
いくつか試して、もっとも使いやすい1本を見つけてみましょう。歯ブラシの交換時期については、月1回を目安にします。毛が開くと汚れの除去効果が落ちるため、裏側から見て、毛先が横にはみ出していた場合は1ヶ月未満でも新しいものに交換しましょう。
●舌磨き
1日1回を目途に、舌を前に突き出して、舌ブラシを使って奥から手前にゆっくりとこすります。舌ブラシは水洗いをしながら、圧力は加えずに舌の表面を滑らせるように動かしていきます。細菌の塊である舌苔は口臭の原因となり、夜寝ている間に増殖します。そのため、舌磨きは最も舌苔の量が多い起床時に行うのが効果的です。
機能的口腔ケアの方法
●顔の体操
しっかり目をつぶり、唇を横に引いて頬をあげます。その後、口と目を思い切りあけます。もういちど口をしっかり閉じてから、頬を膨らませて、口を左右に動かします。
●舌の体操
口を開けて行うものと、閉じて行うものがあります。
口を開けて舌を思いきり出したり引っ込めたり左右に動かし、口の周りをなめるように回します。
口を閉じて、舌で上・下唇を内側から押したり、頬を押します。
●唾液腺マッサージ
【参考文献】
調剤と情報2022年2月号、厚生労働省:e-ヘルスネット[情報提供]歯・口腔の健康、日本歯科医師会:歯の学校2021.vol72、HAPPY Smile 2020. Vol28、オーラルフレイル対策のためのお口の運動と食生活、システマ:歯周病について、LION:歯ブラシの選び方