今回は潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群などの「大腸の病気」についてのお話です。
大腸の役割について
大腸は全長1.6メートルの管で、盲腸から始まり上行(じょうこう)結腸、横行(おうこう)結腸、下行(かこう)結腸、S状結腸、直腸で構成されています。
盲腸からS状結腸までを結腸といいます。
大腸は、糞便を固くするために、腸管の壁にある血管へ水分と塩類を吸収させる働きがあります。また、糞便をなめらかにするために粘液を分泌しています。多量の腸内の細菌を排泄し(全固形成分の約1/3)、細菌に対する防御機構も働いています。そして筋肉の蠕動(ぜんどう)運動により、内容物を直腸に向かって移動させます。
大腸の運動は自律神経によって調節されていて、糞便は2種類の運動をしています。

緊張波は、「前方に進んでは戻る」という行ったりきたりの動きをします。この運動により、大腸粘膜と内容物が長時間接触するようにしています。そして水分と塩類の吸収を促進させます。もう1つは集団蠕動運動といって、横行結腸を空にするように糞便をS状結腸に進め、S状結腸は、排便まで糞便を貯留します。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は医療費助成対象疾病の指定難病に定められている主に粘膜と粘膜下層を侵しびらんや潰瘍を形成する大腸の炎症性の病気です。直腸は必ず炎症を起こします。原因は不明ですが、ストレス、免疫異常が関係していると考えられています。30歳以下の成人に多く、長期にわたり大腸に炎症をおこすと、次第に悪化する傾向があります。持続的に下痢と血便が繰り返しおこる大腸の病気です。
〈症状〉
下痢、血便、発熱、頻脈、貧血がおこります。ほとんどが下痢、粘血便から始まり、粘血便は比較的長く続きます。病巣(びょうそう)範囲が広がるにつれて腹痛、発熱がおき、便は膿のようになります。
〈治療〉
基本的には薬物療法です。腸管の炎症を抑え、免疫反応を抑える薬を使います。病気の原因は免疫異常によると考えられているので、
腸の炎症を抑える5-ASA製剤を中心に、免疫抑制剤、副腎皮質ステロイド剤を使った治療を行います。10年以上経過した全大腸の潰
瘍性大腸炎は、発がんのリスクが高いといわれ、定期的な経過観察が必要です。
クローン病
クローン病は医療費助成対象疾病の指定難病に定められている原因不明の炎症性腸疾患です。口腔から肛門周囲まで消化管のどの部位にも起こり得ますが、好発部位は大腸や小腸です。炎症や潰瘍は連続せず、とびとびにできることが特徴です。1932年ニューヨーク、マウントサイナイ病院の内科医クローン博士らによってはじめて報告されました。10代後半~ 20代の若者に発症することが多く、患者数は年々増加しています。
〈症状〉
症状は炎症や潰瘍が発生した部位によって異なりますが、多くの場合、腹痛、下痢、肛門部の痛み、痔ろう、発熱などが現れます。
これらの症状が落ち着いたり(寛解期)、悪くなったり(活動期)を繰り返し、やがて栄養障害による体重減少が起こります。
〈治療〉
活動期から寛解期に誘導し、寛解状態を維持することを目的に、炎症を落ち着かせるための治療を行います。薬物療法や栄養療法な
どの内科的治療と外科手術的治療があり、治療法は単独あるいは組み合わせて選択されます。薬物療法では炎症や免疫の異常を抑えるため、サリチル酸製剤や副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤、分子標的治療薬(抗TNF抗体)などが使われます。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは、検査では異常が見られないが、腹痛と便秘、または下痢を慢性的に繰り返す病気です。腸管の運動が異常に亢進し、刺激への反応が過敏になることで引き起こされると考えられています。
〈症状〉
主な原因は、ストレス、不安、抑うつ、恐怖などの心理的要因や自律神経の失調とされています。社会の複雑化やストレスの増加に伴い、症状に悩む人が増えている病気で、便通異常のタイプから「便秘型」、「下痢型」、「混合型」、「分類不能型」の4つのタイプに分類されます。
便秘型は便秘症状が主となるタイプ、下痢型は下痢症状が主となるタイプであり、混合型は下痢と便秘を繰り返すタイプです。分類
不能型は、他の3つのタイプに当てはめることが難しいタイプを指します。
〈治療〉
過敏性腸症候群の治療では、生活習慣の改善が大切です。食事療法や薬物療法を中心に、必要に応じて心理療法などを行います。
生活習慣の改善では規則正しい生活と十分な睡眠、適度な運動が推奨されます。また、ストレスの原因をなるべく避けて、ストレスを抱え込まない生活を送ることが大切です。薬物療法では症状に合わせて、腸の運動を整える薬、腸内細菌の乱れを整える整腸剤(プロバイオティクス)、お腹の痛みを抑える薬、下痢止め薬などが処方されます。抗不安薬、自律神経調整薬、漢方薬が処方される場合もあります。食事療法では 1 日 3 食、規則正しくバランスのよい食事を心がけましょう。暴飲暴食、寝る前の食事、油っぽい食べ物、アルコールや香辛料、炭酸飲料、コーヒーなど刺激の強い食べ物も控えめに。十分な水分摂取も大切です。
参考文献: おなかの健康ドッドコム、新横浜国際クリニックホームページ
