つばさだより 2023.12.05

【2023.12月号】つばさだよりNo.349

 今回はステロイド外用剤のお話です。

 ステロイド外用剤とは、身体に起きる炎症を抑える働きのあるステロイド(副腎皮質ホルモン)を化学的に合成し、薬効成分として配合した外用剤のことです。副腎皮質ホルモンの持つ抗炎症作用・抗アレルギー作用を局所で発揮し、全身への影響が少ないころから、炎症性皮膚疾患の治療には欠かせない薬の一つです。

 ステロイド外用剤には、剤型が軟膏、クリーム、ローション、テープなどの種類があります。作用は、強いものから「ストロンゲスト」「ベリーストロング」「ストロング」「マイルド」「ウィーク」の5つランクに分類されています。

 ステロイド外用剤は、皮膚が薄い部分ほど吸収率がよく、作用が強くでるため、医師は年齢や治療部位を加味して、最適なランクのステロイドを選択します。

 市販の医薬品(OTC医薬品)は、5つのランクのうち、「ストロング」「マイルド」「ウィーク」の製品が販売されています。

 

ステロイド外用剤の吸収率

 

 前腕の内側のステロイド成分(ヒドロコルチゾン)の吸収率を1としたときの健康な皮膚の吸収率の差を示した図です。
陰部や首から上など、皮膚が薄くデリケートな部分は特にステロイド外用剤の吸収率が高いことが分かります。このような部位にステロイド外用剤を使用するときは、用法・用量を守って、医師から指示された期間で使用しましょう。

 

ステロイド外用剤の強さのランク

皮疹の重症度とステロイド外用剤の選択

 医師は皮疹の重症度と皮疹のある部位、患者さんの年齢を考えて薬を選択しています。塗布量が少ないと効果が十分発揮でません。指示された用法・用量を守り使用することが大切です。

 

ステロイド外用剤の上手な使い方

1.優しく塗る:薬を擦りこまず、優しく伸ばして塗るようにしましょう。皮膚の細かい溝は横方向に入っているので薬もこれに沿って横方向に伸ばすとよいでしょう。

2.適量を塗る:1FTU※を基本に十分な量を塗るようにしましょう。軽くティッシュが付くくらいが目安です。

3.使用期間:処方薬は、医師から指示された期間を守りましょう。OTC医薬品では5~6日間使用してもよくならない場合は使用をやめて医師や薬剤師に相談しましょう。

4.1日1~2回患部に塗布し、湿疹やかゆみなどの炎症がよくなったら使用をやめましょう。

5.化膿している患部には抗生物質配合薬を使用しましょう。

※1FTU(1フィンガーチップユニット)とは、25gチューブの場合、大人の人差し指の先から第一関節まで薬を押し出した量(0.5g程度)で大人の手のひら2枚分に塗ることができます。5gチューブでは2回分、10gチューブでは1.5回分絞り出した量となります。チューブの大きさで量が異なるため注意が必要です。ローションの場合は、1円玉サイズが1FTUに相当します。

 

副作用について

 ステロイド外用剤の副作用には「全身性」と「局所性」に大別されます。

 「全身性の副作用」は、ステロイド外用剤を適切に使用する限りは通常起こり得ないもので、内服や注射などステロイドの全身投与を行った場合に見られます。

 「局所性の副作用」は、長期にわたって連用した場合や、皮膚が薄くデリケートな部位に強いステロイドを使用し続けることで、使用した部位に見られるものです。正しい使用では、局所性副作用が現れることはほとんどありません。しかし、健康な皮膚に使用したり、症状がなくなった後も長期的に使用し続けることで皮膚の細胞増殖が抑制され、皮膚がだんだんと薄くなり赤みが出たり、血管が浮き出て見えるようなります。長期間の使用でステロイドが持つ免疫抑制作用で皮膚の抵抗力が低下し、ニキビが出やすくなったり、カンジタ症や白癬など感染症が起きやすくなったり、治りにくくなったりします。

 弱いステロイド外用剤を漫然と使い続けるのもよくありません。医師の指示にしたがい十分な効果のステロイド外用剤を使用して、効果的に治療するようにしましょう。

《参考文献》ヒフノコトサイト 田辺三菱製薬ホームページ

      くすりと健康の情報局 第一三共ヘルスケアホームページ

      日経メディカル